夏には初夏と盛夏と晩夏がございます

 一口に「夏に見たい映画・ドラマ・アニメ・バラエティ」と言われても、困ってしまいます。夏には初夏と盛夏と晩夏があって、それぞれで見たい作品が変わってくるように思うからです。衣替えのある初夏なら、可愛らしい夏服が素敵なアニメ『あの夏で待ってる』が見たくなります。夏真っ盛りには、怖い話が気分にピッタリですね。私が見たいのはクール・ビューティー夏川結衣が主演のドラマ『あなたの隣に誰かいる』です。恐怖で凍り付いた背筋の強張りに、北村一輝の濃く暑苦しい顔が良い塩梅に効いてくれます。夏の終わりに見たいのはドラマ『ビーチボーイズ』でしょうか。反町隆史が熱唱する主題歌やサントラの音楽に加え、個人的にはThe Beach Boysの『Kokomo』をBGMに流しながら、じっくり見直したいです。昔は出演する女性ばかり見ていましたけど、今は主演の男性二人に注目したいのです。

 同性愛に目覚めたのではありません。あの頃の私は彼らを直視できませんでした。あまりにも眩しすぎて、まるで太陽でしたよ。放送当時に見られなかった分も二人を見ようという貧乏性が働いて、再視聴を求めるわけですが正直、今も正視できるか自信が無いです。

 それでも見たいのは、理由があります。今の二人を主演にして続編を作るとしたら、どんな作品になるのかな? と想像してみたいからです。

 想像してみようと頑張ったのですが、私の貧弱な想像力ではサッパリ浮かんできませんでした。それは私が彼ら二人を観察していなかったためです。暗く惨めな自分と比べ、フォックス竹野内豊は逞しく光り輝いてしましたし、日焼けして黒かったけどポイズン反町はキラキラしていました。そんな二人を見られませんでしたよ、私如きが!

 でも今は多少、気が楽になりました。私も光り輝く存在になったからです! というわけではありません。年を取ったら他人と自分を比べて落ち込むことが減りました(無くなりはしませんけど)。そして、こう考えるようになったのですーー昔はカッコよかった奴も今は色々と悩んでいるよな、と。

 そうなりますと現金なもので、二人を見てみたくなるのですよ。昔と今の二人を。二十五年前の1997年放送の正編を先に見て、続いて新作の続編を見る。そして年齢に負けず相変わらずかっこよくて輝いている二大スターの競演を見て、胸を熱くしたいのです。

 還暦のトム・クルーズが『トップガン』の続編をやれるのですから、それより若い二人は鍛えた体で海へ飛び込んでもらいましょう。俺たちの夏は終わっていないってか、まだこれからだ! とかアピールしてもらうのです(打ち切りになる某少年誌の最終回みたいですけど気にしない気にしない)。俺たちは、まだまだやれるんだってところをですね、月九なんて何十年も見ていない彼らと同年代の男たちに見せつけるのです。見たいですよ、少なくとも私は!

 問題は若い視聴者です。例えばZ世代は、彼らの父親世代の男性の裸の上半身を見たがるでしょうか(下半身なら見たがるかもしれませんが、放送は不可能です)。

 ですが多くの女性と一部の男性にとって、かっこいい男性の逞しい裸体には抗しがたい魅力があるのは事実です。それは映画&ドラマの『ウォーターボーイズ』やアニメ&映画の『Free!』等の運動系お水作品が大ヒットしていることからも明らかです。それならば次は、鍛え上げられた肉体は年齢に関係なく人を魅了することを証明する段階でしょう。

 夏は、いつか終わる。けれど一年が過ぎれば再び、暑い夏がやってくる。来年もまた、夏は来るのだ――少し寂しい気持ちになる晩夏に見る作品は、そんな風に来夏の訪れを予感させるものが良いです。